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 3.耐震性(建物対地震)

 現在の住宅の耐震性は、その平均寿命から逆算された耐震性を持っています。もし住宅の寿命をさらに10年、20年と長く想定すると、地震に見舞われる確率は確実に上がっていきます。
  いざというときでも、建物は人命を守り、自分自身の構造を守り、その資産価値を守らなければなりません。住宅の寿命を少しでも長く想定して建築できるよう、現在の住宅の耐震性とその改善点について考えてみます。

  現在の住宅の耐震性は、建物が地震から受ける地震力ととらえ、 この地震力に勝る力を備えるという考え方です。地震力は地震の揺れによる加速度に比例して大きさが変わります。 また、建物自体の重量によっても変わってきます。同じ地震を同じ地点で受けたとしても建物の重さによって地震力は変わってくるのです。 さらにもっと細かく言えば、建物内の家具が多いか少ないかで積載重量が変わってくるので、建物が受ける地震の力も変わってきます。 建物や家財の重量が小さければ小さいほど受ける地震力は小さくて済みます。特に屋根など高い位置が重いと、大きく地震力の影響を受けてしまいます。
 地震力は水平方向(横方向)成分と垂直方向(縦方向)の成分に分けられます。このうち垂直方向については、 建物荷重と積載荷重の重力による効果で平常時との差が小さく、通常の建物自身の自重や積載荷重に耐えるように 設計しておけば、かなりの耐震性をもつ状態となります。ちなみに阪神・淡路大震災の縦揺れの最大加速度は 332ガルでした。この数字が980ガルを超えない限り、地震の加速度によってモノが浮き上がるということは ありません。
 問題となるのは水平方向の地震力です。建物の耐震性を考えるとき、通常地震力と言えば水平方向の地震力を指します。
 正方形の壁に横から地震力が加わると、正方形を平行四辺形に変形させようとします。(図1)
耐震(図1)
 このような変形を防ごうとすることが耐震の取り組みです。
 壁面が変形しないように、筋交い合板を使って地震力に対抗します。(図2)
耐震2(図2)
 このように耐震のために筋交い合板で補強された壁のことを耐力壁といいます。ただし、耐力壁を建物に 組み込むことだけが耐震の取り組みではありません。他にも耐力壁を活かすための工夫が必要です。
 耐力壁の効果を発揮させるためには筋交いの接合部や合板を止める釘、耐力壁が取りつく柱と土台の接合部などをしっかりと緊結しなければなりません。また、耐力壁は建物全体に対してバランスよく配置しなければ効き目が偏り、倒壊の原因になることもあります。(図3)
耐震(図3)
 この中で、地震力に対抗するためにもっとも重要な部分は(図1)(図2)などでも説明した「変形させない」という部分です。さらに言えば、変形させないように筋交い合板で「固くする」という部分です。
 現在の耐震住宅は、「固くする」ということで地震動エネルギーに対抗しています。

建物・人が被害を受けるのは地震動エネルギー


 地下で地震が発生すると地震動エネルギーが地盤内を伝わり、やがて建物内に入ってきます。この地震動エネルギーによって建物・人・家財などに被害を及ぼします。本当の地震力とはではなくエネルギーです。 振動には共振現象という特徴があります。共振とは建物の揺れるリズムと地盤の揺れるリズムが一緒になる状態で、建物への入力エネルギーが2〜3倍に増加してしまいます。倒壊の危険性が最も高まる状態であり、この状態を基準にした強度が住宅には必要です。
 耐震性を考えるとき、に対抗しようと考えるのと、地震動エネルギーに対抗しようと考えるのでは方法と結果が変わってきます。
 現在の耐震住宅地震力ととらえて、建物を固くすることで対抗しています。しかし、地震力地震動エネルギーととらえた場合、エネルギーを吸収して減らすことを考えます。これが制震です。
 住宅に入ってくる地震動エネルギーが大きくなってくると、耐震の固くするという方法では損傷を蓄積しながら対抗するようになります。具体的にいうと接合部分や筋交い・合板などが損傷してしまいます。合板なら、止めつけているクギのクギ穴一つ一つがゆるんできますが、一度ゆるんだクギ穴は元には戻りません。ゆるんだクギ穴は力を発揮しないので次々に別のクギ穴がゆるむことになり、こうして損傷を蓄積してしまうのです。
 地震力をエネルギーとして対抗しなければ、効率よく被害を軽減することはできません。

いかに地震被害を軽減するか

 噴火、台風、洪水など他の自然災害と同じように地震の発生源を取り除くことは不可能です。地震による建物の被害を軽減するためには地上でうまく対処するしかありません。そのための方法の一つに制震があります。
 地震の際、建物が受ける地震動エネルギーをどのように消費するかによって、どんな被害をどれぐらい激しく受けるかが変わってきます。運動エネルギーとして消費したり、歪みエネルギーとして消費すると建物が激しくゆれたり、構造体に復元が不可能な損傷を蓄積していきます。反対に減衰によって多く消費した場合には被害を軽減することができます。
エネルギー消費割合図
耐震住宅
制震補強
    凡例
 減衰とは、この場合振動減衰のことを指し、振動を早く止めようとする効果のことです。例えば、揺れているブランコを放っておくとやがて止まります。前後から受ける空気の抵抗や吊り具の摩擦などによって止まっていきますが、これが減衰の効果です。このように自然に受ける減衰の効果を自然減衰といいます。反対に積極的に減衰効果を期待して付加したもの付加減衰といいます。
 減衰効果は制震によって初めて木造住宅にもたらされたわけではありません。もともと木造は、木部材を構成するセルロース繊維の働きで粘りがあり、ある程度の減衰効果を備えていました。しかし、容易に耐震性をレベルアップするために、今では固さを向上させることのみに取り組んでいるため、減衰力の向上ということには長い間目が向けられていませんでした。ところが研究により、木造住宅減衰効果を積極的にプラスすることでより耐震性が向上することが証明されました。
 実は制震とは建物の減衰効果を積極的に向上させる付加減衰システムのことです。建物の固さを維持しながら減衰効果にも注目し向上させる努力が、今後の木造住宅には必要です。

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